最近読んだ興味深かった本1
暫く記事が更新出来ず、申し訳ございませんでした。
さて、最近読んで興味深かった本を2-3ご紹介させて頂きます。
福沢諭吉「官」との闘い 著者:小川原 正道
病院に行った時にたまたま手に取って読んでみたら、面白くてそのまま買ってしまうという、よくあるパターンです。
福澤先生の教育者、思想家としての面はいろいろ取り上げられてきましたが、ジャーナリストとしての面は余り取り上げられていなかったような気がします。そう言えば当時主要紙であった時事新報を総設されたのに。
これを読むと維新直後の政府高官との蜜月、そしてその後の国家観、天皇制のあり方への考えの相違から逆に政府に敵視されていく過程が平易な文章で書かれています。自由党事件で有名な三島通庸や帝国憲法を起草した井上毅らが敵視していたことも初めて知りました。
福澤先生が「帝室論」の中で下記のことをおっしゃていたことも書かれています。この部分をご紹介します。
すでに述べた通り、福沢は『帝室論』において、天皇と現実政治は分離し、現実政治には関与させずに、あくまで文化的・象徴的権威として君臨させ、学術や文化などの機能を果たすことで、現実政府の不安定性(その理想は二大政党による政権交代だった)を補い、社会の秩序を維持しようとしていた。福沢の帝室を「政治社外」に置くという発想は、復古的勤王主義者から帝室を虚器に擁せんとするものだとの批判を受け、発表当初から多くの反発を招いた。これに対し福沢は、『帝室論』や、その続編ともいうべき『尊王論』のなかで反論を記している。『尊王論』の末尾では、「天子は虚器を擁するに異ならず」という批判に対し、自分は徹頭徹尾「尊王の主義」に従う者であり、帝室の幸福と神聖性を重んじ、だからこそ政治からの分離を主張するのだと主張した。(中略)
『時事新報』は、明治二十二年二月十六日から四月三日にわたって長期連載し、明治憲法に逐条解説を加えた「帝国憲法義解説」において、天皇の「統治権も矢張此の憲法の範囲内に於て執行さるるものと解得して可なる可し」と、あくまで天皇の統治権は憲法の範囲内にあると延べ、議会の協賛をもって天皇は立法権を行うと定めた第五条について、「協賛」とは「Consent」、すなわち「予め議会の承認を要する」ことを意味しており、憲法は議会の立法参与権を強く規定し、予算審議権についても、臣民が納税の義務を負う以上、歳入・歳出について協賛するのは当然であるとして、これを強い権限として認めた。
これはある意味、美濃部達吉博士が唱え大問題となった天皇機関説を越え、ほぼ現憲法に近いことをおっしゃっており、先を見通す目の確かさを再認識させられます。
昭和初期の無視、ないしは批判から、戦後の再評価も含め、淡々とした平易な表現で記されている良書であると感じました。
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