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「日本人はなぜ戦争をしたか 昭和16年夏の敗戦」を読んで

この本は現在東京都副知事の務めている猪瀬直樹さんが1983年、36歳の時に書き上げた本で、数年前石破さんが国会で取り上げた本でもあります。

この本はこういう風に紹介されています。

若手エリートたちによって構成された「模擬内閣」は、あらゆるデータを基に日米開戦を分析、昭和16年8月の段階で「日本必敗」の結論を導き出していた。数少ない資料・当事者の取材を通して机上演習をも再現する。   昭和16年、「内閣総力戦研究所」に軍部・官庁・民間から選りすぐった将来の指導者たちが集められた。それぞれの出身母体に応じて「模擬内閣」を組織し、戦局の展開を予想したのだ。単なる精神論ではなく、兵器増産の見通し、食糧や燃料の自給度や運送経路、同盟国との連携などについて科学的に分析、「奇襲作戦が成功し緒戦の勝利は見込まれるが、長期戦になって物資不足は決定的となり、ソ連の参戦もあって敗れる」という結論を導き出した。この報告は昭和16年8月に、当時の近衛内閣にも報告され、後の首相となる東條陸将も真剣に受け止めていたはずだった。

この本が素晴らしいと思う1点目は、この若きエリート達が開戦前に導き出した、ほぼ正確な戦争の推移予測に光を当てたことです。それぞれのメンバーは若くはありましたが、自分たちが所属していた組織の結構深いレベルの情報に触れることが出来たことから持ち寄った真相に近いデータをもとに、しがらみなく検討すると、真実に近い結論が出てくるものだと今更ながら思わされます。それも比較的短期間、3ヶ月間くらいで出したのですから。

2点目は、その研究成果を受け取った当時の政府首脳部、特に東條英機がその場では否定したものの口外無用を命じ、更にその後の大命降下(首相指名)の後の数ヶ月、昭和天皇の信頼と望み、そして現実の厳しさと周りの情勢に板挟みになって苦悩した姿が描かれていること。これは1983年という時期を考えると出色だと思います。

3点目はエピローグとしてちょっと触れられているだけですが、「反省会」についても書かれていること。そう、昨年NHKで放送されていた海軍反省会について描かれているのです。そちらについての記事はこちら。

NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第一回 開戦 海軍あって国家なし を見て
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第二回 特攻 やましき沈黙 を見て
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第三回 戦犯裁判 第二の戦争  を見て

ちょっと本文もご紹介しましょう。

あれから一年。「反省会」に行ってみることにした。原宿駅から、若者たちの最先端ファッション街として注目を浴びている竹下通り(当時はたけのこ族とかがいたんです、管理人注)を抜け、明治通りを左に曲がる。そこに東郷神社の大きな鳥居がそびえ立っている。一歩中に入ると竹下通りの喧噪が遠い世界のように静かだ。境内にある東郷会館の一階の会議室の入り口。(中略)名札には、ただ「反省会」とだけ書かれている。コの字型にテーブルが並べられているのも変哲がないのだが、そこに座っている人々は一種異様な雰囲気を醸し出していた。単に老人クラブの会合とはちがう。二十五人の出席者は八十歳以上の高齢者が中心でいずれも眼光鋭い。(略)

戦争に敗れてから四十年近い歳月が経ようとしているとき、彼らはなぜアメリカに敗れたのか、なぜ勝てなかったのか、毎月「反省」のために集まってくるのである。

松田レポートの一節。
「今次開戦時における軍令部当事者は・・・伝統の作戦計画を放擲(ほうてき)し、連合艦隊が開戦直前突如思いついた大規模攻勢作戦の主張に屈したことが惨敗の根本原因となったのである・・・」

真珠湾奇襲など思いつきで、あんなもの本来の海軍の作戦になかった。それにやるならなぜ空母を徹底破壊するところまでやらなかったのか、おかげでミッドウェーでわが軍が返り討ちあってしまったではないか・・・。そうだその通りだ。いや、それだけじゃない。総力戦ということがだな、つまりは・・・。

昭和二十年八月十五日という時間がセピア色に支配している東郷会館の一隅。いっぽう昭和五十八年夏の原宿・竹下通りは、平和という語感を原色の風船のようにハチ切らせている。わずか百メートルの隔たりを僕は四十年の歳月とともに一瞬のうちに横切っていた-。

昨年来のNHKスペシャルで取り上げられていた太平洋戦争関係の番組はあたかも最近知りました!みたいな捉え方ですが、随分前から猪瀬さんは取り上げていたんですね。

このほかにも企画院総裁の鈴木禎一さんのインタビューも収録されていて、これまたあのNHKスペシャルの番組にかぶる内容のものでした。

それはさておき、結局のところ判断基準が明確に定まっていない中、空気と勢いがその場を支配し、事態が進んでいってしまい、時間が経過した後、その当時の経緯を批判するという流れが感じられます。


この本は確かに太平洋戦争が主題として挙げられていますが、この本旨は日本人の組織としての意思決定のあり方について問題提起をしているのだと思います。原理原則、データを元に判断することはある程度のレベル以上の人たちは出来るのですが、そういった合理的思考より、所謂空気が支配してしまいがちということ。

そうなると想起せざるを得ないのが、東日本大震災で生じた被害への対応のあり方。同じようなことを繰り返している?いやもっとそれを端的に表しているのが、今の日本の対応のように見えてなりません。現在色々な分野の人たちが「昭和16年夏の敗戦」ならぬ「平成23年の没落」を唱えています。ところが不思議とそういったことが反映されること無く、政治も行政も動いているように見えてなりません。我々は先人達が自らの屍をさらしてまで積み重ねた手痛い教訓を、教訓としてまだ学べていないような気がします。

今の時期、日本にとって本当の正念場なんだなあと思うのです。そのためにも「歴史を鑑とする」姿勢が我々に求められているし、その一助にこの書籍はなりうるような気がします。

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コメント

開戦は
「中国からの撤兵」を誰も言いだせなかったため
避けられなかった。

終戦は
「天皇制の維持」を保証されないため踏み切れず
ご聖断を必要とした。

 客観的情勢を見れば、開戦は避けるべきだし、
終戦は早めるべきだった。
 
 当時支配していた「空気」が誰もがわかる
合理的な意見を封殺した。

 さて現在、原発を巡る客観的情勢はどうだろうか。
大地震前は原発の安全性の過信という「空気」
大地震後は代替エネルギーへの期待という「空気」
「空気」が反対意見を封殺する日本!


「正念場」まさにその通りですね。こぞって首相退陣の空気を醸成するマスコミの空気に流されている間に竹島が風前の灯火になり、中露首脳が絶妙のタイミングで接近したかと思えば尖閣沖衝突事件があの検察審査会に引っ掛かりましたね。時代は日本の政局など歯牙にもかけずに流れて行きます。
戦後がようやく終わり震災後の時代に突入して早や三ヶ月、大局観の確かな政治家の出現が待たれます。
ところで、良し悪しは別として我々日本人は福島原発事故の見通しが立たないことには「その次」を考えられない民族のように思えてならないのですが、どうでしょうか?心ある政治家を早く動かしましょう!それぞれの方法で。

文武両道さん

コメントありがとうございます。

まさにおっしゃる通りだと思います。鈴木貞一さんはここでも「主体的に米国と戦争するのは海軍だから、海軍がはっきり無理だと言えば陸軍も無理強いしなかった」とおっしゃっていましたが、その段階で陸軍が中国からの撤兵を認めたかというと極めて疑問です。「戦えない」ではなく「中国から撤退してもいい」という判断が下せなかったことが大きかったかと。国体の護持もそうですよね。

原発も、こうなってから反対を声高に言う人は正直信用できないなあと思います。反対意見を言う人を尊重する文化を日本は醸成すべきですね。

kktfさん

コメントありがとうございます。

まさにおっしゃるように政局の渦の中にいる人はそれが大事のように感じるのでしょうが、世の中はそれと全く違った渦で、動いているように思います。この2年間の外交的失敗は目を覆わんばかりです。

スリーマイルの時、カーター大統領は原子力規制委員会に全権を持たせ、解決に当たらせたそうです。そこには原子力の専門家が集まり、軍出身者も多かったとか。日本でも、そういった国家的大事に対峙した時に、効果的な人材が集まることが出来るように、日頃からそういった能力の持ち主のデータベース化が必要なのではないかと思います。

そして政治家がどうこうという部分については、今までの総選挙を見ている限りその人の評価と言うよりは、どちらの政党に風が吹いているかで極端な結果が出るように見えます。やはり中選挙区の方がいいのではないでしょうか。このままだとその人の大局観というより、風に乗ったなんとかチルドレンしか生まれないように思います。

ちなみに田原総一朗さんは、次の総理に細野豪志さんを推していました。それは考えたことがなかったですが、そういったところを軸に再結集が為された方がいいのでは?とも感じています。

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